会誌「電力土木」

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新年のあいさつ

新年のあいさつ

村上博之

経済産業省 原子力安全・保安院 電力安全課長

藤野浩一

会長

服部邦男

副会長

武山正人

顧問

経済産業省 原子力安全・保安院 電力安全課長
村  上  博  之
 読者の皆様におかれましては,日頃より電力安全行政に深いご理解とご協力を賜り厚く御礼申し上げます。平成24年の新年を迎え,昨年我が国が大被害を被った東日本大震災や豪雨からの復興がより急ピッチに進んでいく年になることを祈念しております。
  また,前述の東日本大震災を引き起こした東北地方太平洋沖地震及び津波,新潟福島豪雨,紀伊半島豪雨により,我が国のインフラが広範囲かつ多数のダメージを受け,福島第一原子力発電所をはじめ未だ復旧の途上にあります。不自由な避難生活を続けられている被災者の方々にはお見舞い申し上げます。
  さて,現下の情勢を鑑みますと電力関係については,3 月,4 月の地震,津波により海岸沿いに立地している火力発電施設,送電施設等に対して,7 月,8 月の豪雨によって水力発電施設に対して広範囲かつ甚大な被害が発生し,現在も復旧に向けて関係者の皆様の懸命な作業が続いていると承知しています。
  当課においても,このような状況を踏まえつつ,電気設備地震対策ワーキンググループを立ち上げ,専門家の方々に参加していただいて,震災による被害の分析等を行い,電気設備の耐震性の評価,津波への対応の考え方等について検討を行い,自然災害に強い電力システムの構築を推進してまいりたいと思っております。
  また,貴協会にとっても,本年は,公益法人改革の一環として一般社団法人へ移行される年であり,供給力として揚水発電や水力発電に世の中の関心が高まっている中,電力土木の技術の継承,向上に尽力されている貴協会の役割は,ますます重要なものになると考えております。
  会員の皆様におかれましては,電力土木施設の保安を担当されるプロフェッショナルとして,引き続き,建設,設備の維持管理等に取り組んで頂き,復興への一翼を担っていただけますようお願いいたします。
  最後に,貴協会の今後のさらなる発展を望みますとともに,会員である皆様のご多幸を祈念し,新年の挨拶と致します。

会長
藤  野  浩  一
 大きな混乱をもたらした東日本大震災に加えて台風や集中豪雨による大洪水に見舞われる等,電力事業の歴史上希に見る過酷な事象が続いた年が暮れ,新しい年を迎えました。昨年の今頃と比較すると,電気事業に対する社会的関心が格段に高まり,我々電力土木技術者に求められる課題も拡大していることから,改めて身の引き締まる思いをしています。年頭にあたり,いくつかの視点を挙げ,ご参考に供したいと思います。
  ひとつは事態を極力客観的に見ることの大切さです。目前の事象からいったん離れ,歴史的事象の顛末と引き比べて長い目で見たり,国際的視点から位置づけを明確にして広い目で見たりすることができれば,どこにでも通じる妥当性の高い判断ができ,軽佻浮薄なマスコミやエセ論者の影響を排除できます。
  もうひとつは常に原点に帰り一次資料から推論することです。情報過多と言いますが,多いのは主観や利害が混在する二次情報であり,これに頼ってはいられません。一次情報を得るのに必要な収集・咀嚼能力を確保し,これを原理原則に即して再構築するならば,自ずと確かな結論が得られるはずです。
  第三点は,我々が所属・関与している電力業界の特殊性に関する認識の問題です。競争原理の枠外にあった長い歴史を今後どうすべきか,諸外国の事例も踏まえて,改めて議論されています。従来経緯および可能性のある事業形態の利害得失に関する正確な知識があれば,社会的要請や時代の変化に適切に対応できます。
  「いまからの行動はすべて『後世』という観客の前でふるまう行動でなければならない」(司馬遼太郎「峠」)この「後世」に「世界」を加え,説明責任が十分果たせる電力土木技術者でありたい,と願うものです。

副会長
服  部  邦  男
 新年を迎えて,電力土木技術者の皆さんに一言ご挨拶を申し上げます。
  まず,昨年 3 月の東北地方太平洋沖地震および地震に伴う大津波により被災された方々に心からお見舞いを申し上げるとともに,1 日も早い復興をお祈りします。また,発災後,いち早く現場に馳せ参じるなど復旧活動に尽力されてきた電力土木関係者に敬意を表します。
  昨年を振り返りますと,3 月の東北地方太平洋沖地震と大津波,7 月の新潟・福島豪雨,9 月の紀伊半島豪雨など特筆すべき自然災害が多い年でした。
  過去,土木技術者の先輩方は,自然災害のたびに種々学び,技術を発展させてきました。電力土木技術者は,今回の自然災害からできるだけ多くのことを学び,今後の電力供給に資する備えを施すともに,それらの過程で次世代を担う人材を育ててほしいと願います。
  土木技術者は自然という現実を一番良く知っている工学者だと思います。電力土木技術者は自然災害リスクを適切に評価し,かつ,費用対効果にも配慮し,「会社を良くする」あるいは「社会に貢献する」という全体最適の視点を持って活躍してもらいたいものです。
  今回の震災が電気事業に及ぼした影響は極めて甚大でありますが,守るべきはこれまで我々電気事業者が培ってきた「電力安定供給の DNA」であり,強化すべきは社会のニーズを先取りして「希望が持てる未来像」を描き,その実現に向けて英知を集めることです。
  最後になりましたが,この年末年始に電力事業に携われている皆さんにお礼を申し上げるとともに,本年の電力土木技術者の皆さんのますますのご活躍を祈念いたします。
(中部電力(株) 執行役員 土木建築部長)

顧問
武  山  正  人
 新年に当たりご挨拶を申し上げます。
  当協会の会員諸兄には,ご家族ともども元気で新年を迎えられたこととお喜び申し上げます。新しい年がこれから進むべき道程を示す良い年になることを切に願いたいものであります。
  昨年は,私ども土木技術者にとって生涯忘れることのない一年間でした。このたびの災厄は,いまだ人類が経験したことのないものであります。私どもを取り巻く環境は大変厳しいものがありますが,自然と対峙する土木技術者には大きな期待も寄せられています。永年,電気という社会インフラを支えてきたという電力土木技術者の自負は微動だにしません。
  地球環境や資源小国のエネルギー供給を考えるに,化石燃料は発展途上国へ分かち先進国は原子力でと,これが求められる方程式の一般解でありました。特解が出てくるかどうかわかりませんが,更なる技術研鑽の努力を続けなければなりません。
  ここにいたり思い出されるのは,大先輩である廣井 勇先生の「千載ニ亘ル技術者ノ栄辱ハ,懸テソノ設計ノ如向ニアリ」という言葉であります。合わせて,弟子の青山 士先生の「萬象ニ天意ヲ覚ル者ハ幸ナリ」の言葉であります。
  これからの新しい年を,自然科学を追求する諸兄は,しっかりとした哲学を持って突き進んでいっていただきたいと願っております。
((株)四電技術コンサルタント 社長)

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